TikTokなどのSNSでK-POPのサビのダンスが流行し、有名なインフルエンサーが踊っている映像を一度は目にしたことがあるのではないだろうか。近年のK-POPシーンでは、楽曲のプロモーションの一部として他のアイドルグループやアーティストとTikTok上でコラボし、一緒に踊った投稿がもはや恒例のものとなっている。そのほかにも、全身が収められたメンバー毎のダンス映像など、楽曲のサビ部分を用いた動画が複数投稿されている。日本で一大ブームを巻き起こしたK-POPとして代表的なTWICEの「TT」など、真似しやすさを重視したキャッチーな振り付けが多い中、親しみやすさを残しつつ、「魅せる」ことに特化した作り込まれた振り付けやステージも数多く存在することをご存知だろうか。その中でも、「振り付けに小道具が組み込まれている」という共通点を持つ楽曲を紹介したい。

DREAMCATCHER「YOU AND I」

 この楽曲のステージでは、共通してウエスト部分にスカーフが差し込まれた衣装を着用している。2番の入りやラスサビ前ではスカーフを外して手に取り、ダンスに取り入れられている。そして、この楽曲で用いられている小道具のもう一つがステッキ。2番の冒頭で登場するメンバーが、何も持っていなかったはずの手から突如ステッキを登場させる。このステージの一番の見せ場とも言える、華麗にステッキを捌くパフォーマンスはとても目を惹かれる。グループのコンセプトである「悪夢」や、K-POPには珍しいロックなサウンドも相まって、ミステリアスでダークな世界観が作り出されている。

VIXX「桃源郷(Shangri-La)」

 この楽曲は、「東洋ファンタジー」がコンセプトとなっている。韓国の伝統衣装をモチーフとした衣装や扇を用いた、神秘的な雰囲気のパフォーマンスが特徴的な一曲。楽曲冒頭の、タイミングを合わせて全員の扇子が一気に開くさまや、扇を閉じると同時にカメラに視線が向く様子は息を呑む美しさである。ステージの映像によって、歌詞に登場する月や椿が背景に映し出されているものや、床に水面のような映像が映し出されたり、足元にスモークが焚かれていたりなど、さまざまな演出で神秘的な世界観が作り出されている。このグループは、毎度ガチガチに固められたコンセプトと作り込まれた世界観に定評があり、「コンセプトドル」の異名を持つ。そんな彼らだからこそ作り上げることができる、まさに陶酔してしまうようなステージである。

SEVENTEEN「Pretty U」

 筆者の知る小道具が組み込まれた振り付けの中で、最も大きなものが使用されているのがこちら。なんと、ステージ中央にソファが…。この楽曲では、一つのソファを中心にパフォーマンスが繰り広げられる。ソファの前にメンバーが立ってカメラの画角を遮ったり、ソファの後ろの死角もうまく利用したりしてメンバーが入れ替わり立ち替わり歌う姿は、見ていて飽きることのない、まるでミュージカルのよう。楽曲の最後にはソファが左右に分かれてはけていき、ステージを広く使ったパフォーマンスが行われる。舞台セットを退場させるというところまでメンバーがやってしまうというのが、13人という人数を最大限活用していておもしろい。

 

(ちなみに、メンバーの背中側からパフォーマンスを撮影した映像が公式から公開されている。カメラに映らないメンバーの動きも見られるので、個人的にはこちらもおすすめです。)

 

 ビジュアルのみならず、パフォーマンスのクオリティも高く評価されるK-POP。筆者の所感だが、ここ数年は覚えやすく真似しやすいことが重視され、身一つでできる振り付けが多く、小道具を用いた振りがあまり見られなくなったように感じている。技巧を凝らしてステージ上に作り上げられた世界には、各グループの魅力がより色濃く表れる。K-POPのユニークなステージングに、少しでも興味を持って貰えたなら幸いである。