今、空也上人がアツい。
JRのお馴染みのキャンペーン「そうだ、京都行こう。」が今年2023年にキャラクターのようにメインに打ち出したのが、粗末な格好で口から何やら吹き出している像で知られる空也上人だ。

空也上人(903〜972年)は平安時代中期に活躍した僧で、ひたすら「南無阿弥陀仏」を唱える口称念仏を初めて実践した人物として知られている。この教えが広く伝わっていき空也は浄土教の先駆者となった。口から6体の仏像(木製)が出ているが、これは「南無阿弥陀仏」と唱えた声が、阿弥陀如来の形になった瞬間を表現したとされている。 仏像が口から出てくるという形状は、空也上人の説法、つまり仏教の教えを広める役割を象徴しているとも言われていて、いたずらに口から何かが出ているわけではない。しかしながら、唱えているような叫んでいるようなこの空也上人の姿があまりにも独特なので、例えば、以下のような写真(矢沢永吉『ゴールドラッシュ』)を見るだけで、咄嗟に空也を連想してしまう人(筆者)がいるのもまた事実。そのくらい、この空也上人像はある種のインパクトを放つ。時空を超え多数の空也上人が東京駅に大集合し、47都道府県のご当地空也上人のパネルが「んだ 京都さ、えぐ。」(青森県)、「ほうだ 京都、行かざ。」(山梨県)、「だーる 京都、行きましょうね。」(沖縄県)などと、お国言葉で語りかける、JRのキャンペーンのようなものが成立するのも、空也のその佇まいにどこか親しみを感じてしまうからだろう。
そんな空也上人の像は、京都・六波羅蜜寺にあり重要文化財に指定されている。この夏、ぜひ訪ねてみてはどうだろうか。(Shino Okamura)
