社会実践実習
「街と人と音楽と」ゼミは、京都精華大学メディア表現学部の3回生が履修する「社会実践実習」の一環として開講されています。
「社会実践実習」は、メインの実習やこれまでの講義や演習で培った知識・技能を、実社会での運用を通じて体得することを目的としています。わたしたちのクラス・「街と人と音楽と」ゼミ1のほかにも、ゲーム制作やITサービス開発など、アイデアを形にして社会へ発信し、そのプロセスを実践的に学べる多様なクラスが用意されています。
「街と人と音楽と」ゼミ
「街と人と音楽と」ゼミでは「音楽とコミュニティの響き合い」をテーマに掲げています。京都市左京区の一乗寺エリアをフィールドとし、音楽によって「誰もが居心地の良い地域コミュニティ」をいかに活性化できるかを、体験的に探求しています。
本ゼミでは、一乗寺での音楽活動や人々との対話を通じ、街の人々をつなぐ「きっかけ」となるコンテンツと「場」のデザインに取り組んでいます。
具体的な活動は、多世代が気軽に交流できるふたつの柱で構成されています。ひとつは、一乗寺に古くから伝わる「鉄扇踊り」の継承と紹介。もうひとつは、手作り楽器を用いた子どもたちとの即興演奏のワークショップです。
これらの実践を通じて、特定の地域に留まらない、あらゆる場所で応用可能な「コミュニティ活性化のノウハウ」を確立することを目指しています。
教員プロフィール

谷田晴也
1982年 京都市生まれ
街と人と音楽とゼミ 非常勤講師
OBBLi TACOS オーナー。
2007年から左京区一乗寺の飲食店に勤務。2015年に地域の商店と住民と来街者の交流を音楽で結ぶ催し「一乗寺フェス」を勤務先顧客たちと立ち上げ、現在に至る。2020年にOBBLi TACOSを開業。開業と同時にコロナ禍に対応するための街区を横断した商店会組織「一乗寺ドットネット商店会」を立ち上げ、さまざまな制限下での地域活動に取り組む。
2023年度より本ゼミで非常勤講師を担当。
ゼミでは「音遊びワークショップ」を中心とし、学生と一乗寺エリアとの橋渡しを主に担当している。
好きな調味料はポン酢。

岸野雄一
1963年生まれ。育ちも墨田区押上。音楽家、オーガナイザー、著述家など、多岐に渡る活動を包括する名称としてスタディスト(勉強家)を名乗る。
東京藝術大学大学院映像専攻、立教大学現代心理学部、広島市立大学芸術学部にて「映画におけるサウンド・デザイン」の教鞭を執り、美学校音楽学科では主任を務める。
近年では、盆踊りをアップデートするプロジェクト「桜橋和をどり」「高円寺八幡神社大盆踊り会」「札幌市北海盆踊り」「島原大半島祭」「金沢石引ゲバゲバ盆踊り」「名古屋城夏祭り」など、地域に根ざした新しいお祭りを展開。コンビニにDJブースを持ち込んだ『レコードコンビニ』や、墨田区内の銭湯を舞台としたDJイベントなど、常に革新的な『場』を創造している。

安田昌弘
1967年 東京都荒川区生まれ、千葉県柏市育ち。
京都精華大学メディア表現学部教授。
英レスター大学マスコミ研究所(CMCR)で、ピエール・ブルデューの《場》の理論を援用してパリと東京のヒップホップ文化の比較研究を行いPh.D.取得。京都精華大学に赴任してからは、京都の音楽シーンについてフィールドワークに着手。特に最近は、アクターネットワーク理論や「響き合い(レゾナンス)」理論に注目し、音楽や踊りがどのように人々を結びつけ、流動性や加速化の高まる現代社会において持続可能な思いやりや共感意識を醸成しうるかを研究している。
訳書に『ポピュラー音楽理論入門』、『ポピュラー音楽をつくる』、共著に『The International Recording Industries』、『私たちは洋楽とどう向き合ってきたのか』など。
「街と人と音楽と」ゼミ活動歴
2023年度

「街と人と音楽と」ゼミは谷田さんと安田さんを担当教員2として2023年度に発足しました。この時点ではまだ鉄扇踊りについてはほとんどなにも知らない状態です。この年のゼミメンバーは7名で、右も左もわからないまま突っ走り、10月21日に一乗寺公園で開催された「一乗寺フェス」に向けて楽器作りと音あそびのワークショップを企画・実行しました。別の授業で非常勤講師をしていた岸野雄一さんにお願いして、「一乗寺フェス」でメガヒッツ盆踊りのダイジェスト版をお願いしたのが、「街人音」ゼミのいまのかたちに結びついています。
2024年度
「街と人と音楽と」ゼミ2年目は、谷田さん、安田さんに加えて岸野さんもチームに加わり、15人が参加しました。人数が多かったので、鉄扇チーム(岸野さん)、音あそびチーム(安田さん)、広報チーム(谷田さん)に分かれ、それぞれ活動しました。一乗寺郷土芸能保存会の一乗寺鉄扇練習会には2024年6月から参加させていただきました。保存会の皆様はとても寛容で、関係構築が難航するのではないかという懸念は杞憂でした。10月12日の「一乗寺フェス秋まつり」にはのべ2000名(主宰者発表)の来場者があり、300人分用意した手作り楽器はあっという間に売り切れ(無料ですが)ました。夕方からは昨年同様メガヒッツ盆踊りがあり、その後、学生たちが一乗寺鉄扇の踊りのレクチャーをして保存会の皆さんと一緒にみんなで踊りました。
「一乗寺フェス」後は、一年間の活動をまとめるため、「音あそびチーム」は一乗寺のコミュニティづくりのこれからを当事者と考えるワークショップ『第二回 一乗寺ミライ会議』を左京区役所で行いました。「鉄扇チーム」は大学のギャラリーがある明窓館で「一乗寺鉄扇アーカイブ展」を行いました。





2025年度
八大神社神幸祭
音あそびチームでは、2025年5月5日、「お祭り屋台コーナー」を出店しました。水風船釣り、コマ、ボール投げゲーム、ビー玉にホイルを巻いて作る「竜の卵」遊びなど、いくつかの遊びを用意して、当日参加した子ども達が遊べる場所を作りました。



物々交換DJ
鉄扇チームでは、2025年7月5日、堀川会議室にて、参加者が不要になったレコードやCDを持ち寄り、会場内で交換を行う「物々交換DJ」を企画しました。参加者は持参したレコード、CD、カセット1つにつき1枚の交換チケットを受け取り、交換用の音楽ソフトが集められた「エサ箱」から任意の1枚と交換する仕組みです。
本企画では、交換された音源のみを使用し、4名のDJと1名のビートメーカーが即興でミックスを構成しました。前半30分は各DJによる通常のミックス、後半30分は物々交換によって集まった音源を用いたミックスを行い、その間に「ラジオタイム」を設け、ミックスの狙いや即興的な選曲・構成についての解説を行いました。
DJ本人による解説を挟むことで、ミックスの聴きどころや手法への理解を促し、ダンスミュージック文化に対する心理的な敷居を下げ、観客と現場との距離を縮めることを目的としました。





児童館での音あそびワークショップ
音あそびチームでは、修学院児童館と修学院第二児童館に、7月と8月にそれぞれ一回ずつ、合計4回お邪魔して、音あそびのワークショップをしました。7月の第1回目のワークショップでは、3種類の手作り楽器の材料を持ち込んで、子どもたちに好きな楽器を作ってもらいました。牛乳パックとペットボトルのキャップでつくるカスタネットと、ガシャポンのカプセルにビーズを入れてつくるシェイカーと、紙管と風船でつくる小太鼓の3種類です。楽器ができたらみんなでちょっと合奏をして、1回目はそこで終了です。
8月の2回目のワークショップでは、作った楽器を又持ち出して、今度はみんなでドラムサークルをしました。それぞれが作った楽器でグループになって集まって、練習してから、みんなで合奏をします。最初は単純なパターンで始めて、だんだんポリリズムを取り入れていくことになっていたのですが、簡単すぎて途中で飽きてしまう子どもがいたり、うまく出来なくてやめてしまう子どもがいたりで、なかなか難しかったです。
ワークショップ終了後は毎回反省点ばっかりでした。子どもたちがもっと叩きたくなる太鼓の音ってどんなのだろう、とか、失敗しても気にならない仕組みはどうすればいいんだろう、とか、簡単すぎて飽きちゃう子どもと、難しすぎてぐずってしまう子どもを両方ハッピーにするにはなにが足りないのだろうか…などなど。ここでの試行錯誤が、一乗寺フェスの「ドラム盆」へと繋がっていきました。






八大神社八朔祭
一乗寺鉄扇の真骨頂は、なんといっても8月31日(旧暦8月朔日)に八大神社で行われる八朔祭での音頭と踊りの奉納です。2024年度は台風による悪天候で中止になりましたが、25年は好天に恵まれ、鉄扇チームも参加することができました。早めに集まって境内に櫓を立て、提灯やマイクを仕込んで始まりを待ちます。
20時、まず本殿で宮司さんの祝詞奏上がありました。宮座の座員の皆さん、保存会の皆さん、それからわたしたち、というかたちで並びました。祝詞奏上のあと、本堂のまわりを一同でゆっくりと3周まわりました(「お千度まいり」)。もともとは五穀豊穣と天災除けを祈願する行事です。八大神社の周囲の山々からは夏の虫の声が聴こえてきて、暑かったですが、おごそかな夏の夜の空気が包みこんできました(本来であれば、この奉納を境に暑さは納まり、田畑には実りの秋がやってきたのでしょうが、近年ではまだまだ暑さは和らぎませんね)。
お千度まいりのあと、いよいよ鉄扇を奉納します。興味が昂じて保存会の会員になってしまった安田さんは保存会の浴衣を着て嬉しそうでした。ゼミの女性陣も浴衣と前掛けを貸してもらい「正装」で踊りに臨みました。気合が入ります。男性陣は普段着ですが、保存会の団扇を背中に挿して踊りの輪に入ります。渡辺会長をはじめ音頭取りのみなさんが櫓にあがり、一瞬の静寂のあと、「ひぃ〜さ〜かぁ〜た〜のぉ〜」と謡い始めました。手を叩いて踊り始めるわたしたち。さっきまでの厳粛な空気とは打ってかわって楽しげな笑い声も漏れてきます。
保存会の踊り手の皆様と我々だけくらいかと思っていたら、近隣の方や観光客もちらほらいて、見様見真似で踊りの輪に入ってきてくれました。わざわざドイツ?から見に来たという方もいらっしゃったようで、こんなところで国際交流が生まれていました。
「吾妻土産」を一曲やって、音頭と踊りの奉納は終わりました。豊かな世界・平和な世界を求めるわたしたちの願いが、届くところに届いたなら良かったです。





一乗寺フェス
「街と人と音楽と」ゼミ全体として、2025年9月21日、一乗寺公園にて実施しました。
15時から「手作り楽器体験」と「物々交換会」を行いました。「物々交換会」では、以前行った「物々交換DJ」のようにレコードやCDに加え、古本などの交換も行いました。交換しにきた人同士での交流も生まれ、「手作り楽器体験」では、音あそびチームが児童館で行っていた音遊びワークショップをベースに、鉄扇チームとも共同で、子ども達と一緒に楽器作りを行いました。児童館の時よりも年齢層が一気に広がり、作業の難易度もグンッとあがりましたが、参加してくれた子ども達は楽しく楽器を作り上げて持ち帰ってくれました。
17時30分、手作り楽器体験で制作した楽器を参加者がステージ前に持ち寄り、盆踊りの代表的な民謡である「炭坑節」の伴奏を子どもたちとともにドラムサークル形式で演奏するオリジナル企画「ドラム盆」を実施しました。和太鼓を中心とした定石的なリズム構成から演奏を開始し、進行に伴ってラテンアメリカのクラーベを取り入れることで、盆踊りのリズムを多文化的に拡張する試みを行いました。
18時00分、岸野さんによる「メガヒッツ盆踊り」に流れ込み、さまざまな時代・ジャンルのヒット曲に合わせて「炭坑節」の踊りを行いました。伝統的な盆踊りの形式を保ちながらも、リズムや音楽の文脈を変化させることで、子どもから大人までが参加しやすい場を生み出しました。
18時30分からは、一乗寺郷土芸能保存会の皆さまのご協力のもと「一乗寺鉄扇」を踊りました。メガヒッツ盆踊りで踊ってくださった方々に加え、他の来場者様も輪に入ってくださいました。スローテンポな音頭に乗せて、輪が穏やかに広がっていく光景を目にし、前までのプログラムと比べて比較的静かな「一乗寺鉄扇」が、ここまで積極的に参加者の皆さまに受け入れられたことに、私たち一同深い感動を覚えました。











メディアづくり
2025年10月からは、これまでの活動のまとめとして、『一乗寺鉄扇×「街と人と音楽と』ゼミ』(このサイト)と、『活字版・一乗寺ミライ会議』を作りました。『活字版・一乗寺ミライ会議』の詳細については、こちらをご覧ください。


