「一乗寺鉄扇音頭」は、念仏踊りを源流とする、地域芸能の盆踊り。笛や太鼓など鳴物などの雑音はなく、声だけで奏でられる。五七調の独特な節回しが特徴であり、あらゆる部分で韻を整えられたり、緑語・掛け言葉を使ったり、古歌・古事が取り入れてあり修辞的に面白く作られている。全体的に静かで捉えどころのない音頭である。
音頭取りは複数人で務め、初めから最後まで参加者全員で歌い切り1、「ドッコイ」や「ソリャ」といった合いの手も入る。音頭には物語や物づくしといた「くどき」の長文になっているのも特徴の一つ。
歌集には16曲の音頭が収められているが、音源として残っているのは「吾妻土産」「草づくし」「十二月事始め」「津志王丸」「蝉丸」の5曲のみで、一曲あたり20分から30分ほどの長さがある。内容は誰もが知っている物語や、地名、行事などで歌章ができており、各曲目の「でだし」は同じように工夫されている。
音頭の習得は先輩からの口伝えのため、自分なりの歌い方や解釈があり、部分的に言葉や助詞の使い方に間違いがある。

鉄扇音頭の特徴
一乗寺郷土芸能保存会の資料(『一乗寺鉄扇音頭の歴史と踊りについて』)の31ページから32ページに、以下のような記述があります。
- 一つ一つの歌章は、物語、物づくし、紀行文など「くどき」の長文になっている。したがって、踊りながら、また踊りを見ながら音頭を楽しむようになっている。従って鳴物などの雑音はない
- 音頭の謡い方によって聞き取りにくい言葉があっても、よく分かるように、誰もが知っている物語や、地名、行事などで歌章ができている。
- 各曲目の歌章はそれぞれ違った誘い方、節回しがあり、又、同じ曲目の中でも踊りのリズムに似合うように伸びたり、縮んだり、「ドッコイ」「ソレ」と合いの手を入れて謡い方の違う部分がある。
このことは、“福知山音頭”や“おけさ節”のように一小節を習得したらあとは歌詞を入れ替えても歌えるというものではないから、十六曲目をぜんぶ謡いこなすには相当の年月と努力が必要となってくる。
現在では習いたい先輩も故人となり、保存会としても全十六曲目を謡うことは出来ないのは残念である。- 歌章の文は、あらゆる部分で韻を整えたり、緑語・掛け言葉を使ったり、古歌・古事・古諺を取り入れて修辞的におもしろく作られている。
- 音頭は踊りのリズムを合わせるものだが、“阿波おどり”のように三味でリズムを合わせるのと違って、物語ではリズムに合わせるようになっている。先にも述べたように聞いて楽しむ要素を持っている。従って笛・太鼓・三味線などなく静かである。
- どの曲も所要時間は、音頭取の声量や、踊子の疲労を考慮してか、二、三十分で終わるようになっている。しかし何曲も続けて謡えるように、各曲目の“でだし”は同じように工夫されている。
- 「家元」と言うのではなく、各曲がそれぞれ先輩をたずね、口うつしに習い、それを毛筆で自分なりに速記するので、部分的に、言葉や助詞の使い方に間違いがある。
村に小学校も無い時代、昼は十分に田畠で働いたあとで倣ったのたろから止むを得ないであろう。先輩の苦労がしのばれる。
- ただし、一部文献には二組に別れて音頭を取るとの記述もある







