過去と現在、保存と継承

次の世代に移すためには、少しアレンジする必要がる。「これには、こういう面白みがあるからぜひどうぞ」っていうお膳立てをしていかないとダメかなと。それをやるのが保存会の役割です。

鉄扇踊りの現状の環境

◉普段ラジオカセットを聞いて音頭の練習をされてると思いますが、あのカセットの声の人が誰かわかりますか?

 渡辺:いや、わからん。

◉そうなんですか!? じゃあ大先輩ですね。

渡辺:そうそう。

◉ずっとあのカセットを?

岡本:そうですね。多分、渡辺さんを教えていた代の人たちの音声ですよね。

◉渡辺さんの 一つ上の世代ということですか?

岡本:渡辺さんの一つ上の世代の練習風景を録ってるんですよね。

◉練習風景なんですね!?

岡本:練習してる時の様子をテープに記録している。通しでやってるのもあれば、お互いに少し歌っては「ああだ、こうだ」って言ってる。 「十二月事始め」もそうなんだよね。 少し歌って「いや、あれはもう一回」とか「ここの節のここを上げて」とかの指導が入って。

◉結構生々しいですね(笑)。

岡本:そういうやつなんです(笑)。

渡辺:あれの録音した時は自分はまだ入ってへん。 

岡本:音源は30年ぐらい前かな。 

◉30年前の音声をカセットで綺麗に残してるんですね。 

岡本:それが5曲残ってるの。全部で歌詞は16曲あるんですけどね。

渡辺:我々はそのうちの3曲しか習ってへん。

◉「草づくし」と「吾妻土産」と「十二月事始め」ですか?

渡辺:うん。「吾妻土産」と「草づくし」はそこそこ習ったけども、「十二月事始め」はもうほとんど習ってへん。 

◉ではカセットを何回も聞いて最初から練習するわけですね。

渡辺:そうそう。それがこの音源ではちょっとわからん(笑)。 

岡本:ちょっとよく聞き取れないというか、録っている方もそういう目的で録ってないからね。練習の時の合間に録って、ただ流してるような感じだから。

渡辺:「草づくし」と「吾妻土産」はちゃんと通した手本があった。

岡本:それをCDにしてもらったんで、それを使って練習しました。そのふたつはなんとか残せるんだけど、それ以外の曲をどうするかっていうね。

◉「十二月事始め」の方は、練習の風景とのあいだに会話が入ってたりとかすると思うんですけど、練習の始めと終わりの部分はしっかり記録されてるんですか?

岡本:最後の方は「わー」っとなっていて聞き取れなくなって(笑)。もしかしたら残ってるかもしれないけど。ちょっとそこはこのあいだ安田先生と話して、ノイズをなんとか取れるかって話をさせてもらったんだけどね。

◉カセットテープの雑音だったら使ってるソフト的には取り除けると思います。大学の方で間の会話を省いて、編集したバージョンを作れる気がしますね。

岡本:それができたらすごいありがたいね。こっちも当時の会話の様子を聞いてみたいと思うから。

◉僕もすごく興味があります。 

岡本:多分、「十二月事始め」と「津志王丸」というのと「蝉丸」かな。そこまではテープで残ってると思う。

◉なるほど、全部で5曲あるということですね

岡本:5曲はある。 

渡辺:それも音声は鮮明かな? 

岡本:いやぁ、わからない(笑)。

渡辺:ははは(笑)。 

岡本:それやったら練習しようがないからね(笑)。とにかく口伝えばかりやから。

◉そうですね。それを残していくためにも自分たちが習ってないものをなにかかたちとして残して置く必要がありますね。 

岡本:そうだね、そこで我々が残さないと絶対無理やからね。あとに繋がらない。

渡辺:音符もないし、なにもないからね。

これから​鉄扇踊りと​保存会が​どうなって​欲しいのか?

◉残し方の話になったと思うんですけど。これから鉄扇踊りや保存会がどんな方向に向かってほしいのか、気持ちを聞かせてください。

岡本:重要なことだけど、300年続いてきた歴史が我々の時代で消滅するのは残念なことだし。それはこの地域の郷土芸能であり、日本の文化財みたいなものでしょ。そういうものを残していくのは、我々世代の役割ですから、「こういうことがあったんだ」と伝えていく必要があると思う。そのために踊りや歌を歴史も含めて、知ってもらうことは絶対必要だと思っています。 

◉歴史も含めて存在そのものを知ってもらうことは確かに重要ですね。

岡本:そうね。「つまらんから消滅してもいいわ」という意見もあると思うけれど、鉄扇踊りはユニークだし、みんなが大事に残してきただけあって、しっかりと心に残るようなものであると思っています。それを感じたら、「聞くだけじゃなくて参加してみよう」という人が出てくる可能性があるよね。続けていくには、そんな人が参加する必要があると思っている。

 ◉そうですね。

岡本:これまでずっと、鉄扇の持っている意味合いとか、面白みを興味が持てるように伝えてきているわけよね。ただ、同じ状態では残せないんで、次の世代に移すためには、少しアレンジする必要がる。「これには、こういう面白みがあるからぜひどうぞ」っていうお膳立てをしていかないとダメかなと。それをやるのが保存会の役割です。だから、若い学生さんが興味を持って入ってくれると我々は非常に嬉しいです(笑)。 

渡辺:ありがたい、ありがたい。 

◉こちらこそお世話になっています。